草の上星の下

草の上 星の下 (クイーンズコミックス)

草の上 星の下 (クイーンズコミックス)

漫画という媒体が優れている点は基本的には一人が脚本と演出を行えるところだと思う。
もちろん商業的なものを考えないわけにはいかないし、編集という存在もいるため、一人きりの、作家個人の本来のモノではない。それでもその間や選ぶ台詞には個性が出るし、そもそもそんな作品は独りよがりで面白くない。(ことが多い、というかそういった目がない作品が面白い保証は全くない)
その個性が自分の感性とぴったりあった時、非常にうれしいし、またこれからの作品が楽しみになる
アニメは脚本から演出を起こすしかないんだけれど、漫画の場合演出からの脚本が容易―というよりもほとんど並行作業で可能なため、一つ一つのセリフの質、重みが異なる
そんなことをこの作品を読んで改めて思った。短編だからというのもあるけれど、それにしても全てのセリフに無駄がなく、よく練られているなぁと感心した。
単行本に4つの短編、そのどれもが夫婦(結婚?同棲?)を軸に、姉妹や親子といったモノを描いている。そのどれもがありがちな中身だけれど、そのどれもが読み応えがあり、そのどれもが面白い。
そして何より、与えてくれる情報量が自分にとって最適。セリフは最小限で簡潔。それであっても十分に伝わる内容なのはありがちなストーリーなだけではなく、その展開に合わせた演出に合わせたセリフの選択だからこそ。
このあたり、アニメでは意外と難しいし、自分が感想を書くときに澱となることもあるんだよなぁと。(しかし、「紅」周りの感想を見るとあまりのアレな評価に閉こ・・・)
標題にもある「草の上 星の下」もよかったけれど自分は「春が来たなら」
作品を見る上で考える別の展開、セリフが全く浮かばなかったほど、完璧な作品だった。隙がない、無駄がない。だからといって話だけを追っているわけではない。
ただストーリーに合ったセリフ、キャラに合ったセリフなだけなんだけれど、それを練ることが非常に重要だということを再確認できた。