ヨイコノミライ

ヨイコノミライ完全版 4 (IKKI COMICS)

ヨイコノミライ完全版 4 (IKKI COMICS)

「対象を見極めず戦略すら持たず、ただ好きなように書いて売れるわけがない。」
別にこの漫画だけがこんな台詞を言っているわけではないのだけれど、今この本について書くと、この言葉を採り上げずに入られなかった。
果たして自分の書いているものは誰に向けたものなのか?
「批評で無く、ただの感想。」
この辺りも考えずにはいられないが、この漫画の本質でもあり、またそうでもない。(と、わかりにく風に書いて自己完結するのがよくないと思いつつ。)

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とにかく、オタクといわれれる人種の特徴なのかどうかはわからないが、別にそれ以外の人も持っているのではないかと思う。というよりは思いたい。
「人に嫌われたくない。自分のために。」
ただ一つの想いを(様々な要因があるだろうが、結局)自分でねじらせた結果が、サトウナンキさんが最後に書かれた「取り扱った行動様式」となっていると私は思います。

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この漫画は途中で不幸にも連載が中止せざるを得ない状況に陥ってしまった作品です。そのため、去年完結編として大幅な加筆(120ページ?)をされています。
そういった経緯もあるためか、読んでいて「あれ?」と思うようなことがいくつかありました。話が急に加速するのです。言い換えると「まとめにはいったな」という印象。しかしそれは背景を考えると仕方がないことだと思います。
とにかく話のはじまりから、漫研の人たち(というよりは描かれる人全て。作品全て)の悪い面をいかにも醜いかのように描かれています。悪い面や欠点のない人はいないのですが、それを全て醜悪なように魅せられます。
これはオタクしかわかりえないというような表現でなく、読んだ人全てが感じとれると思います。わかりやすいシーンを挙げると「自分の趣味を相手の様子関係なしにひたすら喋り続けるシーン。相手は非常にうんざりといった表情。そして心の中で毒づく。」こういった場面ばかり見せられるのです。それはもう、不快。という感じ。
もちろんこのシーン一つとってもどこに不快を感じるかは人それぞれだと思います。ただし、それを「痛い」と感じれる人となると、数はかなり絞られてしまうと思います。出てくる行動一つ一つが見覚えがある。そんな人でないと。
でも、この漫画のタイトルは「ヨイコノミライ」であって、オタクの醜い面をただ描いているわけではありません。だらだらとただ醜い場面をさらす漫研が一冊の同人誌を作り上げていくのですが、その過程で気づいていきます。このままではいけない。今の状況ではいけない。でも、その先にあるものは・・・いいことばかりではない。
このテーマ自体もままありがちといえばありがちで、合う合わないはあるでしょうが、すんなりと理解できると思います。でもそのテーマを「痛い」と感じ取れる人というのはどれくらいなんでしょうか?
出てくる行動一つ一つが理解できる。そんな人でないと。

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夢はあるけれど、ぬるま湯みたいな今の場所から出たくない。そんな悩みはまず高校生で感じると思います。そのため対象年齢は高校生以上でしょうか。少なくとも、進路をある程度固めた大学3年の自分にはもう遅かったかなという印象です。
これを読む前に、就職か就学かで、一応自分に向き合って先を選びました。そのため、この漫画で提示される「あなたはどっち」という問いに、ある程度の答えを見出していたので、そこまで最後に動揺しませんでした。しかし、決めたとはいえこれを読んでぐらついたのも事実です。私は弱い。
客観的に見るとラストの魅せ方はとても醜くてエグくて、でもそれが真実。そういう気にさせるものでした。読むたびに沈んで沈んで、読む手が止まった結果、読み終えるのに半月もかかりました。
でも醜い部分ばかりを見せられたがゆえに、だんだんと、そんなことはないよ。そういった気にもさせてくれます。これはある視点から見た場合なんだって、極端な場合なんだって。そういうふうに感じれるようになったとたん、この作品のテーマをもう少し気軽に考えられるようになりました。
ここまで反省するのは自分が漫画の様に生きてきた年月が長かったせいだと思います。別に読解能力なんて年齢に比例するとは思いません。むしろ経験値だと思います。いまさらとは思いますが、この本をあっさりと読める時代に読んでおけば、また違った人生になったのかな。
な〜んて、期待しすぎかもしれませんね。