乙女はお姉さまに恋してる3

まるっきり前回の続きです。
前回恋愛感情の点から見ると三人には惹きこまれるものがないと書きましたが。しかしキャラクターの魅力としては貴子は十分ありました。ではなぜ貴子だけが魅力を感じたのでしょうか?
キャラクターに魅力を持たせるには、キャラを立たせるには、視聴者に強い印象を与えなければなりません。強い印象を与えるには視聴者の経験に基づいた行動によってシンパシーを感じさせたり、キャラクターに同じことを何度もさせたり、記憶に残るような台詞を言わせたりするなど様々なことが考えられます。
とにかく強い印象が与えられたキャラクターは次に登場したときの印象が、なんの印象も感じていないキャラクターよりも注意の向け方が全く異なります。自分の興味があるものは判別がつきますが、興味ないものには判別しにくいということと似ています。
貴子はエルダー選挙時点で瑞穂に根が正直であることを指摘されたり、不服でもエルダーとなった瑞穂をお姉さまと呼んだりと序盤で数多くの印象を与えます。
しかしまりやは自分の気持ちに気づきはじめる9話より以前に強い印象を与える箇所がほとんどといっていいほどありませんでした。そのためまりやに注目がいっていない状態で片思いに気づくシーンを長々と語られることに、白々しささえ感じました。
実際、まりやも二回目を見ると、いろいろ内面を読み取れる台詞はありましたが、それは10話でまりやに強い印象を受け、注意がいったからであって、一回見ただけで心に残せるような印象的なシーンは皆無でした。何気ない台詞であってもそれが印象深いように感じ取れる演出が貴子にはあり、まりやにはなかった、それだけです。(というかツンデレだからというのが一番大きそうだと実は思ったり思わなかったり)

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さて、3話の紫苑が講堂に数多く集まる人たちを見て言った「まるでアイドルのコンサート会場ですね」腹黒いです。エルダー就任のくだりは瑞穂の派手な立ち回りに隠れてしまっていましたが、紫苑の講堂での演説と保健室で瑞穂に漏らした本音、そして「そこまで紫苑さんが言うなら・・・」というやりとりは面白いです。
紫苑のキャラクター性という点でもおもしろいのですが、それよりも瑞穂が言ったそこまで紫苑さんが言うなら・・・という台詞。・・・には講堂に行きますという意味と、エルダーになりますという意味が込められているのでしょうが、この時点ではやる気に満ち溢れているわけではありません。それが奏のリボンを通してエルダーとして行動していくこととなり、由佳里やまりや、劇を通してエルダーとしての経験を積み、ダンスではエルダーとして学園で生活し、終えようとしていました。
このようにおとボクではこの瑞穂の女学院編入しエルダーとして一年間を過ごす様が軸に話が進められていました。それに添えるような形で他のキャラクターの出来事があり、最終回に花を添える形でまりや、貴子が片思いをするさまが描かれていた。
これがおとボクなのではないでしょうか。ちなみに最後のほうの瑞穂のないがしろ具合ですが、あれは成長としては瑞穂最大の見所、貴子のピンチをキスで助けるぜ!のシーンでエルダーとしては完成してしまい、最終回でエルダーとしての責を果たすということを述べる程度で十分だと判断したものではないでしょうか?(そのため最後の2話の完璧超人度が自分にとってはつまらないのだけれど)
そして完成されたエルダーがこの後なんのしこりも残さず卒業する様が、最終話エンディングのこの後イラストと相まってたやすく想像でき、完璧な、きれいなラストに感じさせたわけです。

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よくよく考えてみればエロゲ原作のアニメで全部通して見れたのはこれが初めてです。とても上手く作ってくれたのだなぁ、そう思います。全体的にキャラを魅せるという点ではパッとしない演出でしたが、選挙のくだり・水着の締め・意義申し立てでの貴子のキャラ立てと瑞穂の覚悟・ダンスシーンの演出と瑞穂の覚悟はかなり光っていました。