マイマイ新子と千年の魔法 〜変わらないことを望むオタク気質に対しての直接的な表現はもはや暴力〜

マイマイ新子と千年の魔法公式HP
*冒頭五分がニコニコ動画マッドハウス公式チャンネルで公開していたので追加

とりあえず公式HPとプロモで流れるバスの効いた音楽を聴いて気に入れば劇場版を見に行くべき(だった)。というのも方言はあるものの難解な専門用語もない一般的な設定で、ストーリーもたいしたことが起きるわけではない。田舎の町に都会の子が引越してきて、仲良くなって楽しく過ごすという部分に多くの時間を使う本作に対して、迫力ある重低音のバスでリズムをとって感情を揺さぶる作りは映画ならでは。映画館で見てよかったと正直に思う。
さてネタバレを極力少なくして紹介しようと思うとこれが難しい。小学三年生の新子は1000年前の自分の町並を想像しては現実に投影するような空想少女。空想と現実が交差し混ざる映像に子供時代に郷愁を感じさせる本作はジブリ宮崎駿作品)っぽいとも言われている。しかしトトロが存在するように、魔法が当たり前のように使えるように、神様が疲れを癒す温泉旅館があるように、ファンタジーに現実世界への暗喩が巧妙に隠されているジブリとは違い、マイマイ新子では子供時代特有の空想でのみ許される世界として直接表現している。
子どもたちが集まって楽しく遊び、新子はおじいちゃんから教えてもらった昔の人々の暮らしを空想し、それらを暖かく見守る大人たち。子供の世界、1000年前の世界、大人の世界この三つの世界には大きな隔たりがあるものの、なにかのきっかけでふいに繋がってしまう。大人の描き方は非常にシビアで、汚い部分を隠さない。いや子供に隠しつつもそれが漏れ出てしまう描写が非常に生々しい。
いろいろ言いたいこともあるのだけれど、あまり説明すると無粋になるしネタバレも回避できそうにないのでこれぐらいにしておく。ただ暗喩であるからこその年寄りくさい説教臭さは感じなかった。直接的だからこそ素直に画面に描かれた子供時代の充実した日々に羨ましさを感じ、美しさを懐かしんだ。そしてそれはもう過ぎてしまった時代であり、自分はもうその世界にはいないということを理解し、未練を残さずに先に進もうと決意させた。就職間近というこのタイミングでこの映画を見れて本当によかったと思う。
あと映像作り、1000年前の人々の暮らしの映像が現実世界に映るのを見てNHK教育のアニメとか博物館とかでやりそうとか思ってしまった。文部科学省特選と知ってものすごく納得。ていうか金出してアニメ業界育てればいい。レイアウトで都会から来る女の子の初登場時から内スカート?のレースを見せつけるようなアオリのカメラで延々と写すのを見て、こういうの(エロとかロリとか宮崎駿とかそんな意味)が大事なのかなと複雑な気持ち。もちろんそういう部分で興奮したけれど。もちろん性的な意味でなく。
P.S.公開はほとんどの劇場で終了したけれど、まだいくつかの場所ではやってるらしいので見ていない人は是非。劇場・前売情報
*ここまで読んでまだ踏ん切りがつかない人用にマッドハウスさんがネタバレ気味で美味しいシーンを6分用意してくれています。