映像で選ぶ、2014年アニメOP・ED・劇中音響3選

2014年で特に好きだったOP・ED・劇中音響を映像観点で3作品ずつ選びました。
この記事のために毎クールOP・EDのメモを残しています。興味がある方は[2014アニソン]のタグでまとめてありますので、覗いていただければと思います。

OP

ED

劇中音響

OP


シリーズの最後を締めるのにふさわしい映像で、あまりの情報量に打ちひしがれました。
キャリバー編ではステータス画面や来訪した場所のリスト、激闘のフラッシュバックと経験が記録として描かれます。大樹の前に並ぶ彼らは、地面に刺さった伝説の剣と並ぶ存在に見えます。
一方マザーズ・ロザリオ編では、乳児から少女、ゲームのキャラクターと一人の人間が描かれます。新しいメンバーを従来のメンバーの差し替えという形でお披露目し、あまつさえ息を呑むほどの剣技を披露するなど、伝説の剣を扱う存在といえるでしょう。
石碑やHPバーといった記録と団欒といった記憶の狭間を駆け、新たな世界へと飛び立つ姿はまさに旅人でした。


ClariSの軽快な音楽とURAの小気味良いカット&アクションの相性が抜群の映像で、モーショングラフィックス系の映像にも関わらずストーリー仕立てで新鮮でした。
男女が夏の旅行の計画を立てるワクワク感いっぱいのAメロ、女性陣3人の姿勢が足取りやカメラワークに反映されてドキドキ感で目が離せないBメロ、乗り過ごしや星空や忍者からのお姫様抱っこと意表を突くカットに心が揺さぶられ感動するサビ。
携帯や情報雑誌といったガジェットでお手本のように段階を経ていくのが高校生らしく、とても楽しい仕掛けで見事に惹きこまれてしまいました。


キャラクターまでグラフィックスとして組み込まれた映像で、デザインの自在さに思わず呆けてしまいました。
全てをグラフィックスとして扱うためにキャラクターやオブジェクト、背景の主線をなくしています。キャラクターもピクトグラムになったり単純化されたり、テクスチャーが貼られたり、音が流れるように現れたりと様々な形に変わります。
ある種モーショングラフィックスのためにキャラクターが非人間的な描かれ方をしているようにも見えるのですが、淡いデザインで一際輝く瞳が彼女たちに意志があることを証明しています。
縁取りなどで強調される猫写はスタッフ・彼女たちが歌う詞・山、いずれも彼女たちに命を吹き込むモノ達です。白をバックに【監督山本祐介】というクレジットが大きく出た後、リップシンクで「夏色プレゼント」と彼女たちが歌う姿は、キャラクターと映像制作者の関係まで届きました。

ED


絵コンテ・演出・作画監督・原画を一人で手がけられた独特な身体動作の映像で、手描きアニメーションの魅力に心が踊りました。
大人になってしまうと「歩く」という行為は手段になってしまいがちですが、子供にとっては「動く」のが楽しいものです。成長すると目線が変わってつい見落としがちですが、あの頃の自分を振り帰ってみると案外簡単に取り戻せます。
最初はつまらなそうにしていた皆がとても良い表情に変化しますが、こんな芝居を見せられたら誰だって楽笑顔になるだろうし、真似をして身体を動かしたくなります。


レイヤーや画面効果がてんこ盛りの映像で、3Dアニメーションの熱意に圧倒されました。
CGのキャラクターを踊らせるだけでなく、漫画のコマ割りのようなカットの挿入・ブラー・トューンレンダリングを強調されたキャラクターを配置することで動きを作り、発光フィルタ・パラフレア・夕景と夜景の融合した背景で舞台を作っています。
それに二人の踊りが揃うのは自然なことではありません。そこに至るまでには相手の動きを見てこちらが合わせるといった調整が必要です。
人々をハピネスにするために至る所に手が行き届いた映像は、何度観ても、何処を観ても楽しいです。


今年も『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』や『さばげぶっ!』、『グリザイアの果実』といったチビキャラEDがとても豊富でした。その中で『未確認で進行形』を選んだのは、ひとえにどこを観ても楽しいからです。
素材に動きを後付けしていくため、手を入れるほど自然と音楽に沿っていく傾向があるように思います。そうなるとわざとらしく感じることもあるのですが、明るい楽曲にのって三人が終始楽しそうにリズムを取っている姿に、野暮なことは思い浮かびませんでした。
楽しいというのは溢れ、伝播し、増殖するものです。そんじょそこらの躓き程度であれば、笑顔を浮かべれて当然なのです。
と、去年の3選『GJ部』「I wish 〜ときめきの魔法〜」をほぼ引用しました。今年も武山篤さんの映像が楽しみです。

劇中音響


よくある中二病ブコメの設定にもかかわらず視聴者を突き放すような映像で、1話を観た時は一体何が行われているか上手く認識できませんでした。
幼なじみの胸を掴んでの起床から5分後に世界が滅んでいましたという展開も驚きですが、モノクルの魔導師が銃を構えるという冗談みたいなデザインで、ピアノとバイオリンが煽るというセンスには流石についていけませんでした。ハリーポッターのようなパブリックスクールで忍者とじゃれあう場面で静謐なスキャットが流れるなんて、どう扱ってよいのかわかりません。
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの音楽は今まで観てきた世界とは異なる法則だったため混乱してしまいましたが、新しい扉を開いてくれました。

  • 『HisCoool! セハガール』


セガのゲームに入ってあーだこーだ言うという一部の層を狙い撃ちしたような映像で、当時を感じさせる雰囲気が懐かしかったです。
ドット絵・かくかくしたポリゴン・荒い3D・ピコピコした電子音からゲームセンターで聞いたことのある音まで、セガのゲームをほとんど遊んでいない人でも楽しめるものでした。
新規にモデリングを起こす場面も多く、内容も後半息切れと一発ネタの感じは拭えない手法でしたが、音楽だけは使いまわしても素直に良い曲だと思いました。
バラエティー番組やニュース番組ではアニメやドラマのBGMが使われるわけで、ショートアニメを中心でも、こういった方法が増えてくれれば、有名な楽曲が生まれ、BGMに注目する人も増えるのではないかと思います。

  • 『ピンポン』


コマ割りのような画面分割が多用される映像で、そのリズムが心地よかったです。
画面分割でキャラクターを描いた場合、分割された画面で占める割合は増えますが、TV画面から見ると小さくなります。卓球というおそらく最小の球技に人生をかける青年達の物語にとって、これほど最適な画面はないでしょう。
単調で軽いピンポンの音が鳴り響く中、自問自答を繰り返すように増えるコマ割りが心地よいというのは耳が痛い話です。どこかで聞いたことがあるという鼻歌は優しくとも、視聴者にとっては変な歌で、決して視聴者のものではありません。
厳しい現実を突きつけられましたが、この快楽を知っているから我々はアニメを観続けるのだという思いを強くしました。