2012年TVアニメ10選【番外編】

一年を区切りにアニメの面白かったエピソードを選んで宣言する。この企画で一番楽しいのは当然、面白いアニメを観返すことです。
ですが、自分の記憶だけを頼りにしたアニメチョイスも凄く楽しいんですよね。(2010年には【思いつき順。順位は付けない。】というフォーマットがあったように、もともとこの企画の意図はそこにあったと思います。)
ただ、何も指針がないとなかなか作品が浮かびませんでしたので、2つの基準を決めて選びました。

人生の系譜として残していくもの

痛みを描いたもの

どちらも強い感情に起因しており、すっと作品が挙がりましたので、個人的な、生々しいチョイスになったと思います。
それぞれ放映当時のTwitter引用と選んだ理由を添えておきましたので、興味がある方は目を通していただけるとありがたいです。

人生の系譜として残していくもの

一人静かに見るスイートプリキュア47話は最高だ。物語に屈した、殉じた最後だったが、理解者が産まれたことの安堵の笑みにほっとする。唯一の仲間であり信奉者だったファルセットを消したノイズだったが、雑音として認められても仕方がない。羽やエフェクトの楽譜をイメージしたラストバトルは圧巻。

敵とともに奏でる音楽。誰もが気付ける単純なモチーフは、一年間積み重ねてきた彼女達から発せられるからこそ、響き伝わるものもあると思いました。
その正確さ、強力さは実に子供番組における正義の体現ではないでしょうか。

#偽物語 白と黒、あとほんのり赤回、ほんでしましま。本物と偽物、牢屋、特撮異空間、ひたぎクラブの詐欺られ演出、(尾石達也)化物語イチャラブ黄緑空間と反転、偽物語ベッドと向き、黄黒ジャージ→赤白ジャージ、脱いでピンクの肌と汗、明るい青色シアンと赤、熱の移動

色を追っていくだけでここまで物語性が生まれる、アニメという媒体はここまで出来るのかと、その唯一性に改めて感動しました。

  • 『妖狐✕僕SS』第11話【陽炎】

#いぬぼく 埋められていく回、今まで短い作中時間で、僕のシンプルな願いをどんどん高めていくだけだった。しかし今回、長い年月をかけ、本棚や部屋や世界を積み重ねていくことで、犬の想いが形作られていく過程を見る。何度目かわからないスタートラインでゴールテープ。

アニメは映像(画)で語れとよく言われますが、全編モノローグで自分の空虚さを語るというのに痺れました。ここまでしないと、これでも表せないのが人の感情というものなのでしょう。アニメは常に映像(絵と音)で語っているのです。

  • ちはやふる』第25話【もれいづるつきのかげのさやけさ】

#ちはやふる かるた回、感じが良い、f音、一字決まりの枚数と、より具体的になっていく競技としてのギフト。その詳細に触れたちはやは、廊下で唄うように詠み上げる。唄を愛するかなちゃんのように。そして持たざるものとしての太一は、他の真実に触れる。素振りという運動競技の基本、部活だった。

私はこの作品に出会うためにアニメを観続けていました。音は人の感情を揺さぶり、世界を作る。そんな持論を確信に変えてくれた作品です。

#咲阿知 桜回、悠木碧東山奈央花澤香菜MAKO内山夕実でこれは凄いアニメになるかもと思ったけれど、悠木碧東山奈央小清水亜美の原村和の三人で役がすでに揃ってた。陽射しピンクはまだしも夕陽ピンクには唖然とした。なんというフィールドコントロール

前シリーズと比較したキャラクターデザインやカラーデザインに、制作スタッフの気概を感じました。アニメを本気で作るとはこういうことなのかなと。

スマプリ面白すぎて感動した。戦闘パートなのに情報量多すぎる。

バンクやフォーマットの決まったアニメは、深夜アニメを見慣れている人間にとっては結構苦痛なのですが、【スマイル】を冠した本作品が【吉本新喜劇要素】を採用したのには正直驚きました。自分が女児向けアニメでこんなに退屈せずに、笑えるようになるとは思いませんでした。

  • TARI TARI』第2話【集ったり あがいたり】

#TARITARI の身長低い子物語がぐっとくる。教頭がゴツいのを筆頭に、周りが皆敵のごとくデカイ。そんな中明るく脳天気に行動しつつも、世間との関係を断ち、膜を作る。けれど友人の巨漢には並び立つ。

この作品のモチーフが全部自分に当てはまるんですよ、ほんと嘘みたいに一致。

#うた恋い https://t.co/1Gf3qgKX 3話の香りの返礼としての風。散りざまに咲かせる華もある。老後の道中、賑やかな旅路が楽しそうでよかった。 http://t.co/eAj3Iv81 http://t.co/FTuS43oP

普通の人のように結婚もせず、恋に仕事に歌ばかり詠んできた三人が、年老いて暗く沈む様が身につまされました。それでもと、聖地巡礼に満面の笑みを浮かべる様には救われます。

#氷菓 古典という形式、ルールに対して、若者(≒学生)だからこそ選ぶ道がある。枠に縛られるな。けれど己の武器について間違わない。小説原作を別の小説家がアニメの脚本に書き換え、その別の小説家のアニメ作品を手がけた監督が用いた最終回の光景を、本作にも重ねる。染み入るような作品だった。

長年アニメを観ていると蓄積されていく製作・制作の内部事情ですが、変に凝り固まった価値観に閉塞感を感じることがあります。そのような心情を言い当てるかのような問いかけでしたが、積み重ねてきた知識から導き出せる答えが、新たな道となることもあります。例えば、田中公平の音楽で鳥のような千反田えるの髪のなびきは、トップ2の最終話を幻視しました。

#さくら荘 参照先から記述外の問に応える白紙が鮮烈。 夕景でのましろをまともに見れない拒絶から、先輩ズ企画&作画のプールパーティーに、桜の刺繍が綺麗な白いお守りという励ましは堪らない。 EDの音楽に載せた恥ずかしい告白の花火は爽快で、大人びた悩みでも青春だ。

切羽詰まった状況を忙しなく描くというように、物語の展開が本編アニメの描写に影響を与える演出は直感的で好きです。ところがこの作品は、作中人物の技術が本編アニメの描写に影響を与えるんですよね。
それは逆もまた然り。脈絡なく現れた花火という青春の光景に、「やるしか無い」というストレートな感情の爆発は、これまた直感的だなぁと感心しました。

痛みを描いたもの


心底信じていた人に突然裏切られる様子が自分勝手に描かれていて、相手の見えなさも含めて妙にリアルな心情風景と感じました。ただただ痛かったです。

#偽物語 月と人工照明が出たので、物語シリーズのセカンドシーズンでは太陽が出ます。それにしても尾石達也スカイ(黄色い夜間フィルター)がここまで大掛かりな使われ方をされるとは…月詠から大好きだったので感慨深い。

前シリーズで積み上げてきた正しさの象徴が、圧倒的な暴力によって物理的にも精神的にも破壊されていく様が痛いです。

#ゆるめいつ 3でぃ こたつ回、こたつが人をダメにするんじゃない、ダメな人がこたつを理由にするだけだ。ということで、こたつほとんど関係なくボケ倒してた。カットが小気味良いなぁほんと。

こたつから出ないというダメな所信表明にもかかわらず、酒でまるでなかったようになっているというこの事実が痛いです。

#Fate/Zero 王の返還、さすがに最終回は全てのモチーフが帰結していく映像群が抜群に面白かった。切嗣の自業自得の結果、綺麗の獲得した絶望、ウェイバーの物語、雁夜の夢、そして金を背負った王の返還。泥をすすって生かされた裸の英雄王と、絶望の丘に戻されてなお甲冑を着込む騎士王。

これだけ虚淵玄の独自色を打ち出していても、最終話で完璧に原作世界に収束していく様は痛々しかったです。

  • さんかれあ』第12話【あの瞬間…俺は…(The Meaning of Bite】

すごい、凄い格好いい、さんかれあ最終回!1クールでまだまだ続くアニメで続かない。終わってる。嘆き、絶望。
#さんかれあ 12話、屍姫最終話のラスボスに馬乗りになって生きる、生きると叫んでフェードアウトと双璧をなすぐらい格好いい終わり方。覚悟、生き様の体現。

ゾンビ萌えを散々説いていた主人公が現実に叶い戸惑う姿は、自分自身がよく漏らす「死にたい」に通じていて耳の痛い話でした。


それぞれ苦い結末を迎えた学園祭でしたが、全員が揃って一つの目的を達成した際には、こうして笑い合えるんですよね。その事実が痛かったです。

ココロコネクト7話、もうやだ…

思ったことがつい口や行動に出てしまう欲望開放という現象に、次々に傷ついて離れていく仲間たち。その次回予告のクレジットと、外部からの「人って傷つけあうものだと思っている」という正論が痛かったです。

#僕H 10話、背中の悲恋!高橋丈夫!!寿命のつきかけた主人公と、供給側の魔力欠乏で服どころか肌が剥がれているリサラの【比翼の鳥】。そんな状態でも肌を晒し続けるリサラは観ていて非常に痛ましい。それでもきちんと興奮する主人公に感動した。

この痛々しい姿を主人公に指摘させて、視聴者を義憤に駆らせるのが普通の作品だと思います。その定石を外した、踏み込ませない作りが視聴者にとっては辛く痛かったです。

#新世界より 早季さんはほんと魔女みたいな御人や…といういつもの感想。全ての事象は彼女のためにある。

キャンプから一転して訪れた生命の危機に、強制的に成長を促される作画や芝居が凄惨でした。子供が性に対して覚悟を決める表情が痛々しかったです。

#中二病 武本康弘回最高だった、なんという境界線…

中二病と言われる男女二人の告白シーンで、まるでトレンディードラマのような挿入歌や光がかかります。このベタベタな甘い雰囲気が視聴者にとってはイタいなと。

むすび

思った以上に長くなってしまいました。ここまで読んでくださってありがとうございます。
この記事もエピソードを選んだ後に随分時間がかかっています。放映当時の感想もですが、自分の内に抱えたものと齟齬が生じていないか反芻し、修正してようやく形になりました。
残す事の難しさを実感しつつも、その作品のことだけを考えて過ごすということは幸せです。あやふやなものが確信へと変わる瞬間が心地良いです。特に【人生の系譜として残していくもの】として選んだエピソードは、折に触れて挙げるものになっていく予感がします。
とまぁ、こうしてまたも想いを重ねていくことで募らせていくのが私のアニメ視聴スタイルで、ブログ運営方針です。相変わらず重たいやつですが、今年もよろしくお願いします。