成恵の世界
- 作者: 丸川トモヒロ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/09
- メディア: コミック
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ウラシマ効果によって年下の姉がいたり、人格を持つ機械による星船がいたり、バーチャルゲームとSFな設定は割としっかりとしていますが、どちらかというとシャレ・ネタとして用いている感じがします。
もちろんこれだけではここに載るはずもないのですが、この作品で上手いと感じるのはハートフルの部分だったりします。
ハートフルなものって登場人物を見守るような視点で読めて、かつそれが自分に共感できるものが理想だと思います。登場人物が考え、行動したことを共感して同化していく感じ。
けれど、その部分に読者へのメッセージ性を持たせてしまった場合、それは登場人物と読者を分けることになり、同化が大変難しくなってしまいます。
この読者に向けてのメッセージ性が成恵の世界では少し表現がの方法が異なります。
二巻10話「香奈花、学校へ行く・・・」ですが、友達の少ない八木が助け、家に呼んだ香奈花は仲の悪い成恵の姉でした。
心配し、帰らせてくれと電話で言われ、いつの間にか香奈花がいなくなったのを見てショックを受ける八木。
「今朝はブスに磨きかかっているわね」と外に出ると出迎えてくれる香奈花や成恵達。微妙な空気の成恵と八木だったが成恵が謝ろうとするのを制して「いいのよ行きましょ」と言う。
「いろんな気持ちを鞄に押し込み私は今日も学校に向かう うつむき加減で小さな喜びをさがしながら」という独白で終わる。
これは読者にとってのメッセージとして捉えることも出来ますが、八木の内面をきちんと捉えたメッセージでもあります。
このようにキャラクターの心情の説明であり、同化を促すようなメッセージであり、かつ読者にも宛てるような台詞を書けるのがこの作者の特徴です。
この感覚は実際に読んでもらえると伝わると思います。ちなみにギャグのみの話もあるので、こういった台詞が全ての話に入っているとは言えませんので、数話読んでもらえればと思います。
10話から読んでもらっても多分なんとなくわかると思いますので、気になった方はぜひ。