いばらの王

早速書きました。

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

・大学生になってから知ったため、わりと先入観無しで読めた(気がする)
・一年かけて古本屋の立ち読みで全て読んだのだが、この手の本はやはり通しで読みたい
・そのため最終巻を立ち読みしてから2週間後には全てをそろえた(たまたままとめて安く購入できた)
・帯は「古城脱出活劇! 〜その巻の紹介〜 岩原裕二のダークホラー最新作」となっていた。

感染すると6週間で発症・6時間で細胞が石化して死亡してしまう病気=メデューサが世界で蔓延。治療法が全くないこの病気で愛する息子を失ったある富豪が、古城を改装して設立したコールドスリープカプセルセンター。新技術であるコールドカプセルで、治療法が見つかるまで眠ることができるのは世界で160人だけであった。主人公のカスミは双子のシズクと一緒にメデューサに感染してしまうが、選ばれたのはカスミ一人だった。内向的でいつもシズクに依存しがちなカスミは一人だけが生きることを是としなかった。しかし、「生きて 私の分まで」というシズクの願いもむなしく、コールドカプセルから目覚めたカスミは異様な光景を目にする。160のコールドカプセルがあった大きな白い部屋は、いばらに覆われていた。20人ぐらいのカプセルが開き、他の人も起き、その光景を目にする。突然こうもりと竜の合わさったようなものに襲われるカスミ。そしてその場にいた人達が現状を把握するまもなく群れが襲った。パニックになる一同は数人を残して巨大エレベータへと殺到する。カスミも乗ろうとするがエレベータの前に集まる人たちに突き飛ばされてしまう。エレベータの扉が開き中に入っていく人たちはしかし、30メートルはありそうな巨大な怪物にまとめて食べられてしまう。エレベータの扉を閉め、残ったものはこれからどうするかを相談する。城の変わりように何年経ったのか、どうしてこうなったのか、シズクがどうなったのか。メデューサという時間は刻一刻と迫りつつある、あるかどうかわからない助けを待っている余裕はない。とりあえず一同は出口を目指す。怪物がいる古城の中を…

・トーンを極力使用しない方向で、迫力あるアクションを魅せ、背景のいばらや古城の瓦礫の書き込み具合は、少し見づらいところがあるものの凄いの一言。
・化け物の徘徊する古城を脱出する人たち。かよわくて何のとりえもない少女と、何でもこなすスーパーマッチョなハッカー、黒人、子供、色気のある女、技術者といった構成メンバー。そしてそのハッカーが迫り来る怪物や困難に対して次々に対処して脱出しようとするうちにボスと対決する。全6巻は最適な巻数だったと思います(大体どんな漫画も長すぎると感じてしまうほうなんですが)。ただ後半の戦いはマルコの格闘が中心で、作者はよりB級っぽくなってしまったとあります。推薦未公開映画の雰囲気を目指してこのシリーズを描いたとありますが、やはりこれは完全なB級映画では?と思いました。もちろんB級映画には無い、謎というか、ストーリーの根底にある作者の意図といったものは感じ取れるんですが、その部分が全体的に説明不足な気がしました。特に台詞と心情に意図があるのは感じるのですが、もって回った言い方とその言葉の意味を確認できるのが最終話のみといった構成が原因で、わからない物語であるという印象を受けてしまい、その点は非常にもったいない気がしました。しかし、単行本で一気に読むとわりと映画のように読めた(2回目という原因もあるとは思いますが)ので、きちんと読みたい人は全巻そろえて読んでほしいと思います。(全巻そろえるには新冊がいいですよ。そのほうが作者も喜びますから…注:全巻中古ショップで揃えましたが何か?)
・上記のようなストーリーの漫画がなぜ面白いのか?話の展開自体はありがちであり、ドラマ性もさほどないです(もちろん話の流れで存在するドラマはあります)。しかし、読んでいると、ハッとしたり息を呑んだりと物語に引き込まれるものがあるんですよ。それはまさしくアクション映画のアクションシーンのように。この漫画はそういった見せ方が非常に上手いといえます。最後の謎自体は特筆すべきものではなく、幕引きもあっさりとしたものでありましたが、これもそういった映画ではよくあるパターンでないでしょうか?作者のコメントも合わせて妙に納得のいくラストシーンでした。